やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11巻の感想です。例のごとくネタバレ満載となっています。
最初に大雑把な感想、その後に気になったシーン・文章に焦点を当てながら今後の奉仕部のゆくさきについて思ったことをまとめました。
最初に俺ガイル11巻のあらすじです。
まちがい続け、いつまでも手の届かない答え。
一色いろはの依頼を受け、バレンタインデーのイベントを手伝うことになった奉仕部。そのイベントには三浦や海老名、川崎などいつものメンバーも加わり、より大規模なものになっていく。穏やかで暖かな空気の中、だんだんと見過ごせなくなってくる小さな違和感、慣れないことで戸惑っているのだと自分に言い聞かせようとしても誤魔化せない気持ち。
本物から目をそらしてでも、この時間がずっと続けばいいのかもしれない--。
何も気づかないほうが良かったのかもしれない--。
提案される「彼女の相談、彼女の依頼」。
雪は静かに降り積もり、彼ら、彼女らの今という景色を変えていく。
俺ガイル11巻はバレインタデーのイベントがメイン。雪ノ下ママが登場し雪ノ下家について多少触れられました。
そして最後の奉仕部の未来へと続く話でした。
目次
ざっと読んだ感想
奉仕部の関係は考えれば考えるほど複雑ですが
一言で表すとすれば三角関係ですね。
昼ドラみたいなドロドロさはありませんがそれに近いものがあります。ホワイトアルバムⅡに似たものを感じました。
- お互いの気持ちを薄々気づいるから踏み出せない
- 自分だけ先に抜け駆けするのはずるい
- 居心地がいい今の関係を崩したくない
そんな気持ちを3人の行動や言動から思いました。
だから読んでいて3人の会話にどこか気持ち悪さがありました。
性格を考えて雪乃が一番ズバッと言い放つかと思いきや、どうしようと困ったような態度が多く見られました。
由比ヶ浜は行き先が定まっていた。一番将来のことを見据えている立場に見えました。
そしてひねくれものの八幡くん。恋の矢印は由比ヶ浜に向いていそうな風に読み取りました。今は部活の関係で線引きして立ち止まっていますが、いつか男女として付き合いたいと感じました。
ただ彼自身も今の奉仕部の関係に居心地の良さというのを感じ取っています。
11巻を通しての3人の思想としては
雪乃→八幡に想いを伝えたいが由比ヶ浜の気持ちを考えてどうしたいか決めれない
由比ヶ浜→八幡が好きだが3人でもいたい
八幡→由比ヶ浜に傾いている。今の奉仕部が崩れるのが怖い
と僕は思っています。
11巻は由比ヶ浜の行動に胸がジーンとしました。自分の気持ちを隠す、これからのために自分が犠牲になってでも前へ進もうとする芯の強い女の子でした。
料理は下手だったけど好きな人のために健気に何度も練習して上手くなった。渡す形は偽りだったけれども想いの人に渡すことができた。ぶれることなく1巻からずっと努力していた。
由比ヶ浜が報われてほしい...です。
ここからは気になったシーンや文章を踏まえながらこれからの奉仕部についての感想です。
奉仕部
ろくなものがなく物置当然でだだっ広かったはずの部室にも今は人の息吹がちゃんとある。
11巻60P
これまで奉仕部としてたくさんの生徒の助けをしてきた3人。11巻ではこれまで助けてきた生徒から再びバレインタデーについての依頼をされます。
一色をはじめ三浦、川なんとかの川崎さんと奉仕部が頼られる存在だと改めて認識させられました。
こうして頼られるようになったのは3人の活躍の賜物です。1巻ではただ雪乃の椅子だけが置かれていた教室でしたが、今は机も置かれ点でバラバラな方を向いておかれた椅子もあります。
ティーセットなども置かれこれまでの奉仕部として活動してきた年月を感じさせる描写になっています。
バレインタデーイベント
11巻でポイントとなるのがバレインタデーです。
葉山という男
葉山は特定の誰かからチョコをもらいません。葉山はみんな仲良く長くいたい、そのためなら嘘だってつくときもある。八幡が大っ嫌いな欺瞞です。
女子の一人の誰かからチョコをもらえば、その女子は他の女子にいじめられるのを考慮してもらわないのではと。
考慮というよりも昔そんな体験をしたかもしれません。好きといった意味ではなくとも家柄の付き合い上、雪乃だけを特別扱いしいじめられたと予想できます。
また小学生の頃に陽乃と雪乃の二人からチョコをもらってそれがきっかけとなった可能性もあり得ますね。
葉山についてはまた別の記事でまとめるとします。
クローズドな環境
葉山にチョコを食べてもらうためにクローズドな環境を作り出します。食べざるを得ない状況であれば仕方なしに食べてもらえます。バレインタイベントを企画し葉山には味見役として来てもらいます。
一色の依頼、川崎の依頼もこなせる一石二鳥以上の企画でした。
表向きでは普通に依頼をこなしているように思えますが、奉仕部としても特に比企谷としても助かったイベントになりました。
比企谷も試食係か?
まあな
なるほどな 117P
という葉山と比企谷のやり取りがありました。葉山は何か見透かしたように八幡に話しかけています。その後八幡がこよなく愛するマッ缶ネタでからかい何かをはぐらかしているふうに捉えられました。
葉山は何を見透かしていたのかですが、葉山自身と同じ境遇についてのことでしょう。八幡も特定の誰かからチョコをもらいたくなかった。
妹の小町からはたまらなく欲しかった。けれども雪乃と由比ヶ浜の気持ちに気づいている八幡としては関係が崩れるのが怖かった。試食係としてクローズド(試食係として食べてもらえる)な環境で食べることができて良かった。
一色の成長と八幡の寂しさ
そうか、今回は一色がちゃんとやるから俺は特に何もしなくていいのか。なんか、手がかからなくなるとそれはそれで寂しいなぁ。75P
八幡のやり方で生徒会長になった一色。クリスマスイベントのときには八幡、奉仕部まで頼ってくるかわいい?後輩という立場。
ですが今回のイベントでは生徒会長として成長した一色の姿があった。イベントの段取りもですが、少しでも経費を浮かせようと海浜総合高校とも合同で実施したりとかなりの手腕っぷりです。
八幡はこれまでも何度も依頼を解決し頼られることに優越感に似たものを味わっていた。一色に頼られないことに一抹の寂しさを感じている八幡がいました。
由比ヶ浜を意識??
見惚れる?八幡
八幡が由比ヶ浜を意識しフォローするような会話がありました。
由比ヶ浜「ま、でもいろはちゃんもお世話焼かれるの結構好きなのかもね。そういうとこ可愛くていいなぁ……」
下から眺める、見上げるような視線に捉えられると、用意していた言葉はすぐに掻き消えた。
八幡「いや、一色のそういうのが可愛いかどうかはまたちょっとアレだろ、別にそれだけが可愛いわけじゃないし……」83P
由比ヶ浜が一色のことを可愛いといったあと、八幡はおそらく同意するようなことを言おうとしていた。が、由比ヶ浜のふるまい・容姿に見惚れて
由比ヶ浜も可愛いぞと言おうとした。
もちろん八幡がそんな照れくさいことをストレートに言えるわけはないので遠回しに由比ヶ浜をフォローするように言っています。
これだけのことから八幡は由比ヶ浜のことが好きだとは言えませんが、少なくとも可愛い女子だとは認めています。そして意識しちゃっています。
由比ヶ浜との距離感
由比ヶ浜とは文化祭のときに2人でどこかに出かけようと約束していました。6巻の260P付近で約束していましたが、いつにするかはまだ未定のままバレインタデーが近づいてきました。
そして11巻最大の山場となった最後のシーン。TDRの次の駅なので葛西臨海公園でしょう。行ったことないので僕は詳しい地理等は分かりません。
由比ヶ浜にデートいこっと誘われて了承した八幡。
そもそも最初に誘ったのは俺だ。ただそれをずっと先延ばしにし続けてきただけだ。
断る理由も特にない。
けれど、それでいいのだろうか、と。そんな疑念がふとよぎる。271P
まず誘われた段階で雪ノ下もいるとは知らされていません。そしてこの時点(待ち合わせ場所に向かっている途中)でも雪ノ下がいるとは思っていません。
八幡は由比ヶ浜と2人でデート?すると考えています。
文化祭のときに約束しずっと先延ばしにしていたから仕方なく出かけているんだ。断る理由も特にないといっています。けれどそれでいいのだろうか、とも疑念を感じています。
それでいいのだろうかという疑念についての解釈ですが
- 自分から誘わずにいてもいいのだろうか?
- 約束したからといって断らずなんとなく誘いを了承していいのだろうか?
と思います。1なのではと思っています。そのあとの文に
電車が速度を落とし、俺の意思とは関係なく、一度大きく揺れてからその動きを止めた。
とあります。八幡の心を表しているとも捉えることができます。
- 一度悩んだがやはり考えるのをやめた
- 自分から進もうとするもやはり立ち止まる選択をした
というふうに。
今の欺瞞な関係は居心地のいいものだが昔の自分からすれば反吐がでそうなもの。奉仕部としての将来を見据えようとしています。
八幡は由比ヶ浜を意識していると思います。アニメは雪ノ下かなと思う作りになっていますが、小説を読むと由比ヶ浜だなと思ってしまいます。
これからを見続けてきた由比ヶ浜結衣
雪ノ下雪乃のための行動
今回の由比ヶ浜はかなり雪ノ下さんを煽っていくスタイル。煽っているとは言い過ぎですが、雪ノ下を誘導、宣戦布告をするようなシーンがいくつかあった。
「いいの。駅まですぐだし。それになんか……ずるい気がするから」222P
雪ノ下の家に向かうが雪ノ下ママが現れ、八幡と由比ヶ浜が帰るときの場面。八幡が送っていくと言うも由比ヶ浜が断りました。
なにが?なんて聞かなくてもわかるように雪ノ下に対して申し訳ないということです。雪乃の気持ちを知っていながら自分だけ八幡にちやほやされたくなかったということ。
雪乃を恋敵として意識しています。
というか逆にこんなこと言う由比ヶ浜さんあざといですね。
次の日のやり取りでも雪ノ下を煽っていた。
「……えっと、あたしのだけ?」231p
「……ヒッキーのは?」232P
雪乃が由比ヶ浜に友チョコを渡し、由比ヶ浜が八幡の分はないの?と雪乃を問い詰めるシーン。
雪乃はこのとき2つのチョコをもっています。
- 机の上にお茶うけとして置いてあるクッキー
- 鞄に隠し持っている本命チョコ
そして八幡に渡したのは机の上のクッキー。義理チョコを渡しました。
由比ヶ浜がどうしてここまで雪乃を追い詰めるようなことをしたのか?
由比ヶ浜が何かしないと雪乃は渡してくれない。だから誘導させているのではと。
由比ヶ浜がいる状況で雪ノ下が渡すなんて酷すぎるかもしれませんが、雪ノ下と八幡二人っきりで雪ノ下が渡すわけないと思って問い詰めた。
少し前の会話にこんなシーンがあります。
すると、ふと部室が静かになる。
「そうなんだ……。あたしもあれからちょっと頑張ったんだけど、なかなかねー」
一瞬沈黙が生まれたことを嫌ったのか、由比ヶ浜が誤魔化すように笑った。230P
雪乃が手作りクッキーを作ってきて八幡の方を向いて何か言おうとしている。しかし雪乃には自分で決めれない。どうすればいいのか分からない。そんな沈黙を破ったのが由比ヶ浜でした。
ここの由比ヶ浜の行動の思惑が曖昧です。
- ただ居心地が悪かったから会話をぶち込んだ
- 八幡にクッキーを渡そうとしているのをふさいだ
最初読んだ時は雪ノ下がクッキーを八幡に食べさせようとしているのを阻止したふうに思っていた。が、沈黙が嫌だったのかなと対して深く考えることでもないかもしれません。
きわめつけなのが最後のシーン。
「もしお互いの思っていることわかっちゃったら、このままっていうのもできないと思う……。だからたぶんこれが最後の相談・あたしたちの最後の依頼はあたしたちのことだよ。」312P
「ゆきのん、それでいい?」
ゆきのんを誘導尋問しているように見えるシーンでしたが、由比ヶ浜は雪乃が否定して踏み出してくれることを願っての行動だった。
勝負に勝ったら欲しいものを手にするというずるいやり方です。自分がずるい卑怯だと思われてもいいけど今のままではいけない。これまで八幡がしてきた自己犠牲です。
ただ八幡の自己犠牲は結局何も解決しない。一時的な解消でしかなく解決ではない。今回の由比ヶ浜がとった行動は今の3人の関係を解決するためのきっかけになりました。
由比ヶ浜が欲しいものとは
「あたしは全部ほしい。今も、これからも。あたし、ずるいんだ。卑怯な子なんだ」311P
「あたしが勝ったら、全部貰う。ずるいかもしんないけど……。それしか思いつかないんだ……。ずっとこのままでいたいなって思うの」313P
由比ヶ浜がほしいものとは何なのでしょうか?
全部もらうと言っていますが全部とは何か?
いくつか考えられます。
由比ヶ浜が欲しいものは次の4つが考えられます。
- 八幡と付き合う
- 今までの奉仕部
- 雪ノ下雪乃と友達
- 3人仲良く
1の八幡と付き合うはそのままの意味です。想いを告げる。2の今までの奉仕部は雪ノ下も由比ヶ浜、八幡互いに好きという気持ちは隠しながら仲良くする、現状維持。
3は雪ノ下雪乃と友達でいること。4は想いを告げた上で3人でいることです。
2の今までの奉仕部というのはこれまでの流れを踏まえると違うのではと。欺瞞の関係で居続けたかったならこれからのことについて触れる、立ち入るべきではなかった。
今現在の奉仕部の関係を考えると
雪ノ下雪乃と由比ヶ浜は八幡が好き。八幡は誰が好きかはよく分からない。
由比ヶ浜からすると八幡に告白すれば八幡を手にできる。だが3人の関係は崩壊してしまう。
告白せず今の気持ちを隠せば3人の関係は存続。だが八幡とは付き合えない。
結局どちらにせよ片方を犠牲にしないといけないと気づいている。けれども勝負で勝てば無理やりにでも両方手にすることができる。
ということを踏まえれば
- 八幡と付き合う
- 雪ノ下雪乃と友達でいる
- 3人仲良く
が由比ヶ浜結衣の欲しいものの気がします。
かなり無茶苦茶なことを言っています。でもそうしないと雪ノ下雪乃も八幡も手にすることができない。
この言葉の裏には
「ゆきのん、ヒッキーはそんな欺瞞な関係でもいいの?よくないよね?」と隠されているのではと。
そして由比ヶ浜の予想通り
八幡と雪乃は否定してくれた。
ホンモノの関係を3人が求め12巻に続く...
【俺ガイル12巻】感想・ネタバレ 由比ヶ浜、幸せになってくれ……