俺ガイル3期の放送が決定。ということで12巻をもう一度読み返してみました。
12巻の感想記事は一度書きましたが、ブログを始めて一番最初に書いた記事。恐ろしいほどに読みづらい。読んだ感想も二度目とは違っているのでこちらの記事をバージョン2としてもう一度書いてみました。
バレンタインデーのイベント、水族館での雪の日を経て、自分たちが踏み出すべき一歩を定める八幡たち。そんな奉仕部に、ある大きな依頼が持ち込まれる。その依頼に対して、雪乃が決意と共に出した答えとは…。―たとえ、その選択を悔いるとしても―。時間の流れがいつか自分たちを大人にするのかもしれない、出会いと別れを繰り返して人は成長するのかもしれない。でも、いつだって目の前には「今」しかなくて―。それぞれの想いを胸に抱えながら、八幡、雪乃、結衣が選ぶ「答え」とは。新たなる青春群像小説、物語は最終章へ。
何に重きを置いて書こうと悩みましたが、やはり外せないのが共依存とラストの由比ヶ浜のシーンでしょう。とくにラストのシーンは涙無くして読めないほど、辛かった。途中までいい感じの雰囲気にさせておきながら最後の落差はきつかった。
気になるシーン、文章に焦点を置いて書く前にとりあえず12巻を読んだ漠然とした感想、後半は気になったところに焦点を置いて細かく感想を書きます。
ざっと読んだ感想
冒頭はこれまでの奉仕部の活動を振り返る回想シーン。1巻から11巻までさまざまなことがあった。3人の関係性を曖昧にしてきたが避け続けてはいけない。
逃げるというか避け続ければいつかこの関係性は解消できる。そう信じていた。この気持ちなんかかなり共感できます。
風邪などは病院に行かなくても治る。病院が嫌いだから病院に行くのをずっと避け続けているみたいなものと思った。3人の関係性もいつかは気にしなくなる日が来る時まで避け続けていたかった。
しかし彼らはホンモノを求めた。
雪乃が父の仕事を引き継ぎたい、そして八幡に依存せず自分の力でやり遂げる。そう語った。そして一色からの依頼であるプロムを私一人でこなして見せる。それが雪乃の成長につながる。
八幡は奉仕部としての仕事がなくなった。八幡にとってみれば雪乃を手伝う言い訳がなくなる。
奉仕部にいかない日々は、もし八幡が奉仕部に入らなかったらこうだったなーという話だった。もちろん奉仕部に入り依頼をこなしてきたからこそ今の関係性もある。ただ奉仕部が無かったらこんな風に日常を過ごしていたんだろうなと。
学校行ってぼーっと授業受けて家帰ってからはゲーム、読書して毎日をただただ過ごす。まるで僕みたいな日々ですね。
そして由比ヶ浜と一緒に帰ったり、遊びにいったりと由比ヶ浜ルート確定に思える流れだった。
由比ヶ浜派の僕からすればがんばれー!と、ずっと応援していた。
が、後半は激流だった。雪乃ママ登場、プロムの危機と悪い空気になったうえで最後の由比ヶ浜の涙。
由比ヶ浜に幸せになってほしい僕からすれば辛かった。2つ目のinterludeで由比ヶ浜が八幡と雪乃のツーショット写真を見つけたときも胸が苦しかった。が、最後のinterludeはほんとずるい。
涙をこらえる由比ヶ浜の姿。想像するだけで胸が締め付けられそう。
12巻は比企谷の女の子を誰でも助けたい、頼られたいというお兄ちゃん気質とそして雪ノ下雪乃のひきがや離れ。小町が入学試験に合格して兄離れしていくのも上手く演出するシーンだった。
そして由比ヶ浜の心情。これらについてもう少し感想を書いていく。
八幡のお兄ちゃん気質
11巻でも一色がバレインタデーイベントを奉仕部の頼りなしでこなしていた。そのときも八幡は一抹の寂しさを覚えていた。
1巻のときは孤高の俺かっこいい! 自己犠牲で周りを助ける、青春は嘘である。などと臭いセリフ吐いていた。そんな八幡がかっこいいと僕は思って読んでいた。
今の八幡の生活と照らし合わせてみると今の生活はリア充と呼べるもの。しかも互いに想いを曖昧に誤魔化し続けている八幡が大嫌いとする欺瞞の関係。これがホンモノと呼べるだろうか?
なにより誰かに頼られることに自己満足してしまっている。しかも頼られないと寂しさを覚えてしまう。さらには妹がいるからなどと言い訳しだす。
様々な女の子たちの世話を焼きたい八幡がいた。
雪ノ下雪乃の自立
11巻での雪ノ下雪乃の依頼は自立。八幡への依存からの脱却だった。
雪ノ下雪乃の八幡への別の感情
雪乃は最後まで見届けて欲しかった。
ただ、由比ヶ浜と陽乃はそれではない、別の何かを期待していた。
「ゆきのんの答えは、それ、なのかな……」49P
「……ああ。そっちか。わたしが聞きたい話じゃなさそうだね」69P
由比ヶ浜は八幡への恋愛感情、陽乃もそれに似たなにかのこと。陽乃は言った後に由比ヶ浜の方を見るしぐさをしていたのでおそらく3人の関係性について聞きたかった。
じゃあ、雪ノ下雪乃の八幡への恋愛感情はどうなったのか?
色々予想できる。
- 八幡への依存を脱却し、対等になったうえで告白する
- 八幡への想いを隠しつづけようとする
- 由比ヶ浜の気持ちを察して諦めた
この3つのうちどれかだと思う。
八幡への想いを隠し続けるのはこれまでと同様に欺瞞の関係を続けていく。八幡のホンモノが欲しいという依頼があるので隠したままではホンモノは見つからない。2の隠すというのは今後の展開として有り得ないのでは。
やはり1の依存から脱却した上で八幡と対等な立場になったうえで告白するというのが可能性としてありそう。というか僕自身そうなってほしい。
由比ヶ浜に譲るのは父の仕事を引き継ぎたい、最後の依頼と同じ羽目になりそう。父の仕事を引き継ぎたいのにもずっと言えず抱え込んでいた。結局は二の舞になる。
こんなのでいいのか?と言いたい。
とすれば雪ノ下雪乃は自立しそして八幡に想いを伝える、意志があるように思える。
由比ヶ浜結衣の本音
アニメでは雪乃を応援していたが、原作を読み返して由比ヶ浜を応援している僕。
そして12巻で由比ヶ浜派の僕は死にかけた。
本物なんてほしくない
2つ目のinterludeの時点から涙が。。
だから、ほんとは。
―本物なんてほしくなかった。
ゆきのんが大事に隠していた八幡とのディズニーでのツーショット。それを見つけた時点で
由比ヶ浜は「あ、やっぱりゆきのんヒッキーのこと好きなんだ」と確信した。
雪乃から八幡への恋愛感情はあるとみていいでしょう。八幡への依存と、好きという感情を両方持っています。
最初の3人で話し合っているとき雪乃は
「けれど、私は……、私が自分でうまくできることを、証明したい。そうすればちゃんと始められると思うから」50P
『始められる』
何を始めるのかとはっきり言っていませんが、この流れであれば3人の関係、もっと言えば八幡への恋愛感情なのでしょう。
八幡と由比ヶ浜に頼ってしまうダメな私だけど、プロムを自力でやり遂げそして母にやりたいことを自分の口で伝える。八幡と対等な立場になったうえでまた新しく始めたい。
そもそもこの奉仕部が何のためにあるのか?どうして雪ノ下雪乃が最初からいたのか?
他人の自立する手助けをすることで自分自身(雪ノ下雪乃)も自立する・成長するための部活動なのではと。
由比ヶ浜について書こうとしていたら雪乃に話がそれてしまった。。
話をinterludeに戻す。
由比ヶ浜は八幡と雪乃がお似合い、ホンモノを持っていると思っている。自分(由比ヶ浜)には越えられない壁が二人との間にある。だからホンモノなんて欲しくなかった。
嫉妬に近いかもしれません。
雪乃には自分には持っていない何かを持っている。そして八幡もおなじものを持っている。
ほんとにまじで由比ヶ浜には幸せになってほしい・・・
由比ヶ浜ルートか?
とは言っても12巻は八幡と一緒にいる時間が長かった。奉仕部として手伝うことがない二人は一緒に帰るように。
「お前は?」
問うと、由比ヶ浜もちょっと考えるような間をとって口元のマフラーをもふもふといじる。
「んー……。あたしも帰る……」
「そうか」
「うん」214P
付き合いたてのカップルみたいなぎこちない会話。由比ヶ浜は八幡が誘ってくることを待って、八幡はびびって誘わなかった。というか誘うという選択肢すら出てなかったように思えます。
そしてプロムの動画撮影のときには
「ああ。……それと、ここ、暗いからな」
言って、少し左肘を上げた。(中略)
そして無言のままにそっと俺の左肘に手を添えた。288P
暗いからという言い訳をはりつけて距離を縮めた。
そしてこの撮影が終わった後の日は
「……どっか寄っていくか?」
「え?」
「あ、いや……。小町の合格祝いか、誕生日祝いか、……なんか用意しようと思っててな」302P
と由比ヶ浜を小町という言い訳を使って誘った。
憎からずと本当に、心が揺れる
変な距離の縮め方だが、どう考えても由比ヶ浜に好意があるように思える。ちょっとずつ一緒にいるようになってきてそして、、、
何より手間暇をかけてくれた事実に胸を打たれる。
それを憎からず思っている相手であれば、なおのこと。
本当に、心が揺れる。315P
小町に手作りのプレゼントを送ろうとしたときの比企谷の独白です。
12巻でかなりキーとなる文章だと思っています。注目すべき2文目と3文目。
『憎からず』と『心が揺れる』
憎からずを辞書で引いてみると
- 愛情を感じてはいるが、それを直接表さず、いやではないと間接的に表す語。かわいい。
- 好感がもてる。感じがよい。
あのひねくれたツンデレの八幡なので2みたいな単純な意味ではない。1の愛情を感じてはいるが、それを直接表さず、いやではないと間接的に表す意味で言ったと考えるのが妥当です。まさに八幡にぴったりな言葉です。
八幡は由比ヶ浜に対して恋愛感情を抱いていますね。
そして本当に、心が揺れる。とは
- 由比ヶ浜に想いを寄せる
- 好意を素直に受け取ろうか悩んだ
恋に落ちたというよりは由比ヶ浜の好意を素直に受け取ろうかと悩んだ。これまでの考えが揺らぎ始めた。といった方が適切。
これまでの考えとは、好意を好意として受け取らない・気持ち悪い意味、理由をつけてしまう癖。
これは優しく接してきた中学の折本に告白したら粉砕した、というトラウマが原因です。それ以来、他人からの好意を素直に受け取らないようになった。自意識の化け物と呼ばれる所以です。
ただそんな自意識の化け物、八幡は徐々に変わりつつあります。
ラストのシーン……
一緒にいる時間が多くなり
お?由比ヶ浜とくっつくのか?と思っていたら保護者側から中止を求める声があがり、そしてプロムが中止になる。
そしてラストの八幡の行動。
「……いつか、助けるって約束したから」353P
助ける、それが八幡のホンモノの気持ちだった。
共依存は仕組みだ。気持ちじゃない。~~~心の中に残っているのは心残りだけだ。353P
とあるように、共依存=仕組み(心理)。でも気持ち(感情)ではない。心理と感情についてはかなり昔の頃に平塚先生にヒントをもらっていた。
「全部の答えを出して消去法で一つずつつぶせ。残ったものが君の答えだ。」
「……計算できずに残った答え、それが人の気持ちというものだよ」9巻228p
探すのに結構苦労しました笑
共依存を理解したうえで考え、絞り出して最後に残ったのが助けたい気持ち。それがホンモノの気持ちだった。
12巻では感情豊かになった八幡。小町が兄離れしたときも涙し、そしてラストの選択。ほんと感情豊かになった。
じゃあ助けたいのは雪乃が好きだからか?友達としても異性としても言えます。この段階では何とも言えないです。
八幡にとっての恋が何を意味しているのかよく分からないので、八幡が好きというまで断定できません。
まあ、はっきり好きと断定できるよりあいまいにされる方が読んでいるほうからすれば考察のしがいがあり楽しいです。
そして、由比ヶ浜の視点に変わります。雪ノ下雪乃を助ける選択をとった八幡を間近で見ています。
「なんかひとつでもわかるとほんと安心する。」355P
八幡が雪乃のことを好きだったと分かった。安心すると言っておきながら、心の中は大雨。そして八幡に泣き顔をみせないように我慢する由比ヶ浜。やばい...
そしてinterlude
2ページもわたり色々書きたいことはあるが一番は
1文目と最後の文の矛盾。
涙が止まってくれてよかった。
中略
涙が止まらなければよかった。358P,359P
強い由比ヶ浜と本音の由比ヶ浜両方の気持ちが出ています。1文目は涙が止まって良かった。我慢しているが、独白が進むにつれて本当の気持ちが徐々にあふれ出します。
そして最後の涙が止まらなければよかった。矛盾する書き方、終わりになっています。
こんなん読んで僕の涙はとまるわけありません。
そしてあとがきがない。これが12巻最後の締めの文。この思いをどこにぶつければいいのか?
ここまで考えたうえで渡航先生はあとがきを入れなかったかのでは。やはり、さすがです。締め切りがギリギリだったからあとがきがなかったと最初は思っていましたが読者が余韻に浸れるようにわざとあとがきを無くしたと思う次第です。
続きの13巻の感想は書いてありますが、また読み直して書き直したいですね。書き直すまえの記事>>>【俺ガイル13巻】感想・ネタバレあり 雪ノ下雪乃の最後のお願い
前の11巻の感想>>>俺ガイル11巻 感想・ネタバレ。奉仕部のゆくさき・・・